坂道の途中で見つけた、何もしない時間。
尾道の街を歩いた日、海の見える場所まで行ってみようと、細い坂道に入りました。
地図では近く見えた場所も、階段を上っていくと、思ったより遠く感じます。途中で何度か足を止めながら、家々の間をゆっくり進みました。
振り返って、気づいた景色。
少し息が上がったところで振り返ると、屋根の向こうに海が見えました。建物の隙間に収まった、細長い青。その上を、小さな船が横切っていきます。
目的地に着いてから景色を眺めるつもりでいたので、こんな途中にも見晴らしのよい場所があることに、少し得をした気分になりました。
写真を一枚撮って、もう少しだけ立ち止まる。歩いている間には気づかなかった風が、汗ばんだ顔に当たりました。
予定に書けない、旅の時間。
坂を下りたあと、海沿いで飲み物を買い、腰を下ろしました。次にどこへ行くか調べようと取り出したスマートフォンも、そのまま鞄へ戻しました。
向こう岸へ進む船を見送り、飲み物をひと口。しばらくすると、また別の船がやってきます。
何かを見学しているわけでも、特別なことをしているわけでもありません。それでも、帰る時間を気にするまでは、ここに座っていたいと思いました。
帰り道に思い返したのは、坂の上から見た景色と、海沿いでぼんやりしていた時間でした。訪れた場所の数は多くありませんでしたが、その日のことは、不思議とはっきり覚えています。
旅先で足を止めた時間が、帰ってからも心に残っていました。